石綿訴訟では、国が敗訴した「泉南石綿訴訟」の最高裁判決を受けて、
国は一定の条件を満たした被害者との和解に応じている。
今回の訴訟の原告の男性も和解基準を満たしていたとみられたことから、
弁護団は容易に和解に至るとみていた。
ところが協議は一向に進まない。提訴から約2年後、国が書面を出し、
「原告の請求権は消失している」と主張し始めた。
国に説明を求めたところ、2019年に和解の基準をひそかに変更し、
賠償請求権が消滅する除斥期間(20年)の起算点を早めたと
明らかにしたという。
理由として、国は、同じ石綿被害訴訟の福岡高裁判決(19年)を
持ち出した。この訴訟で、賠償金の支払いが遅れたことに伴って
支払われる利息「遅延損害金」の起算点が国側の主張よりさかのぼって
認定されたため、除斥期間の起算点も併せて早めたとの理屈だった。